ウィシュマさんの死から3年目に考えたこと
金平茂紀(ジャーナリスト)
ウィシュマ・サンダマリさんの死から3年が過ぎようとしている。私たちの国は、この胸をえぐられるような理不尽な悲劇から一体何を学んだというのだろうか。去年の6月、ほとぼりがさめたとでも思ったのだろうか、政府は、入管法「改正」案を国会に上程し、それが可決成立してしまった。本国で命の危険にさらされるおそれのある人たちを強制的に送還することが可能になっているではないか。収容施設内の医療体制は本質的には何ら改善されていないし、長期収容が回避される措置もとられていない。そもそも人権意識の根本が欠如していないか。人間を人間扱いしない国の社会は、人間から嫌われる。そのことを私たちの国の社会はこれから思い知ることになるだろうか。取材で出会った東京五輪汚職事件で捜査当局に逮捕拘禁されたある被告は、拘置所で長期拘留されたさなかで発病し、「あのまま外部の医療機関にかからなかったならば、死んでいただろうね」としみじみ語っていた。警視庁公安部がでっち上げた「大川原化工機」事件で長期拘留中だった被告のひとりは、長期拘留中に病気が悪化して死亡した。あの事件では起訴自体が取り下げられた。だが失われた命は戻らない。今の私たちの目の前にいる、大地震災害で助けを求めている人たち、からだと心が弱っている人たち、病を患っている人たち。マイノリティ=少数者と弱者(外国人労働者や身体的にハンディキャップがある人たち)に冷たい社会は、幸福で持続できるとは思えない。
ウィシュマさんを悼むこととは、助けを切実に求めている人に誠実に応える社会をつくることだと、僕は思っている。(2024年3月6日、記す)
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